買う方がおトク?アクリルにレーザー加工する際の2つの選択肢

アクリルにレーザー加工を施すときの2つの選択肢

レーザー加工とは、専用の加工機を用いて素材の表面に、文字やイラストを彫刻したり、裁断や穴あけをしたりする加工方法です。扱える素材はガラス、金属、アクリル、革、木材など多岐にわたります。

虫眼鏡を使用して、紙に穴を開ける原理と同様に、レーザー光を集めて熱を溜め、その熱を照射させることで素材が削られる仕組みです。

熱エネルギーによって素材を溶かすことにより加工を行うため、ノコギリでの裁断やプレス機械のせん断などとは違い、素材に直接刃が触れることがありません。

カット面が滑らかで、美しく仕上がるのが最大の魅力。

複雑な造形にも対応でき、データさえあれば、金型の作成も不要なので、業者に依頼する際も、比較的小ロットでの発注が可能な点も特徴です。

一般的な素材のほか、高融点素材や耐熱合金、またセラミックやダイヤモンドといった高脆弱素材を加工することもできます。

アクリルはレーザー加工と非常に好相性で、さまざまなシーンで活用されています。たとえば企業では、会社のロゴが入った看板や、サインディスプレイ、またエントランス看板やネームプレート、販促物やノベルティとして。

 

その他、クリエイターがオリジナルグッズを作ったり、個人でDIYを楽しんだりする際の表現の一手段としても広く用いられています。

 

例としてはウェルカムボードや魚拓のほか、アクリル積み木といったおもちゃ類やアクセサリー、その他写真をアクリル板に転写するなど、使われ方は実に多種多様です。

 

アクリルにレーザー加工を施したい場合、アクリルのレーザー彫刻をしてくれる会社に依頼する方法と、アクリルが加工できるレーザー彫刻機を自身で購入して加工する方法の2つがあります。

 

本文では、レーザー加工を業者に依頼した場合と、個人でレーザー彫刻機を購入してDIYをする場合のメリットやデメリット、各々の価格の相場を比較。またアクリル加工を行う際に気をつけるべきポイントや、テクニックについて解説します。

方法①アクリルのレーザー彫刻をしてくれる会社に依頼する

レーザー加工を、決まった期日までに、最も適した方法で、確実にきれいに仕上げたい場合には専門業者に依頼するのが一番です。

 

業務用であれば、家庭用とは段違いの高出力であるため、厚みのあるアクリル板の切断にも対応できます。

専門業者には一般的な平板を加工する2Dレーザー加工機のほか、長尺やパイプにも対応した3Dレーザー加工機がある場合もあります。

それぞれ異なる特徴を持った複数のレーザー加工機の中から、自分のやりたい加工に最も適した機械で加工してもらえるでしょう。

家庭用の小さなレーザー加工機では、どうしても入りきらない看板などの2m超えの大きなサイズも、業務用の大型の彫刻機であれば対応可能な点もポイントです。

素材は持ち込みできる場合と、業者の用意しているラインナップから選ぶパターンがあります。

持ち込みできる場合でも、塩化ビニールが含まれている素材は加工の際に、人体に有害な塩素ガスを発するため、絶対にNGです。

身近なものでは文具や壁紙、床タイル、家具、カーシート、バッグ、靴、ホース、おもちゃ、ケーブル、合皮などにも含まれています。

知らずに加工に出さないように、事前に持ち込む素材についてはよく確認しましょう。

量産分など、ある程度まとまった数のレーザー加工が必要な場合も、業者への依頼が向いています。

高出力でパワフルな加工機でスピーディーに処理できるためです。しかし、レーザー加工はデータさえあれば、金型などが不要。サンプルのみ、1点から発注可能などといった、小ロットにも対応している業者は実は多いのが特徴です。

DIYでレーザー加工をする場合には、どうしても失敗のリスクはつきものですが、決まった時期までに、高品質なものを確実に仕上げたい場合には、業者に依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。

業者ごとにデータの種類や形式に基準が定められているので、事前に確認し、ルールに則った形で入稿しましょう。

方法②アクリルが加工できるレーザー彫刻機を自身で購入して加工する

個人で使える卓上サイズの家庭用レーザー加工機にはさまざまなバリエーションがあります。

 

業務用と比較して低コストで手に入り、軽量で持ち運びのできる機種も多く、省スペースなのもうれしいポイント。

 

中にはBluetooth対応で専用アプリを入れてスマホからも操作可能という便利な機能つきの機種もあります。

 

もし小型や薄い形状のアクリル板の加工をメインに考えているのであれば、レーザー彫刻機を自身で購入して加工する方法も検討してみましょう。

 

安価で使い勝手のいい家庭用レーザー彫刻機ですが、安心の日本製を手に入れるのが難しい点には注意が必要です。

 

家庭用レーザー彫刻機は近年注目度が高く、世界中のメーカーが参入しています。

 

海外製レーザー彫刻機には日本語の説明書が付属していなかったり、補償やサポートが不十分であったりするケースも。

 

選ぶ際には、実績のあるメーカーであるか、日本向けのサポートは充実しているか、口コミなどもチェックしつつ、慎重に見極めるようにしましょう。

 

その他、レーザー彫刻機を購入する上で、もっとも重要なポイントは「加工できる範囲」と、「レーザーの出力」です。

 

「加工できる範囲」はレーザー彫刻機の仕様として記載されています。

 

この数値が大きければ大きいほど加工できる範囲が広がります。目的とする加工ができる範囲の機種であるか、事前に確認しておきましょう。

 

次に「レーザーの出力」。

基準となるワット数が高ければ高いほど、彫刻のスピードは速くなり、彫れる深さも深くなります。家庭用では最小で1500mW程度から基準となり、紙、木、アクリル、ゴム、革などへのレーザー加工が可能となります。

表面に浅くマーキングする程度であれば、低めのワット数でも問題ないですが、もしアクリル板のカットを行いたい場合には高いワット数が必要となります。

 

例として、厚さ5mmの場合は25W以上、10mm厚になると100Wが必要になってきます。

家庭用での最大出力は40W程度なので、それ以上を求めると小型の業務用を検討してもよいかもしれません。用途に合わせて最適な商品を選びましょう。

それぞれの料金相場

業者に依頼する場合の料金は、加工する素材の厚みや範囲、加工時の出力、選ぶレーザー加工機などによって幅があります。

 

また発注数が増えれば増えるほど1個あたりの加工賃は低くなる傾向にあるため、必ず事前に見積もりを取るようにしましょう。

 

たとえばA社では材料費込みでアクリル板5mmを加工する場合、100mm×100mm以内の加工の場合は1150円、200mm×200mm以内の加工の場合は1800円、300mm×300mm以内の加工の場合は2600円という価格設定でした。

またB社では材料持込みで基本料金1500円は必ずかかり、その上でレーザー彫刻を施す場合は1平方メートルあたり20円、レーザーカットをする場合は1平方メートルあたり5円と価格を設定していました。

 

レーザー彫刻機を購入する場合は、家庭用と業務用で価格は大きく異なります。家庭用は出力が最大で40W程度までのものが中心で、安いものでは1万円代からラインナップされています。

 

安価なレーザー彫刻機は出力が弱く、加工できる範囲も狭いですが、まずは手軽に始めてみたい場合には向いているでしょう。

 

安価な商品のボリュームゾーンは5万円前後までのモデルです。

ビジネス使用や作品の販売を行う場合、趣味でもクオリティにこだわる場合は20〜30万円のゾーンがおすすめです。

 

格安加工機とは違い、補償やサポートがしっかりしており、加工の精度もスピードも格段にアップ。できる加工のバリエーション増え、加工範囲も広がります。

 

20〜30万円の価格帯は中古やリースという選択肢もあるので、併せて検討するのもよいでしょう。

 

その他、ハイスペックなものだと家庭用でも100万円以上する商品もあります。 業務用になると、卓上の小型のものでも出力は一気に上がり、30W〜60Wのものが中心になります。

 

価格は100万円から500万円と幅が広いのが特長です。もっとも需要の高い、中型のもので出力は30W〜100Wとなり価格は300万円から1000万円程度。

 

さらに大型のモデルや金属へ深彫する用途の特殊なレーザー加工機などでは、出力は最大で100W、価格も1000万円を超えます。

アクリルを加工するときに気をつけなければいけないポイント

レーザー加工機を購入して、自分で加工を行う際に注意すべきポイントについてご紹介します。

 

まずは材料となるアクリルの種類をよく確認しましょう。アクリルには製法別に「押し出し」と「キャスト」の2タイプがあります。

 

押し出し製法とは、ペレット状のアクリル樹脂を粘土のように溶かし、ローラーで押し出して固める作り方です。

 

短時間で作ることができ、製造コストを低く抑えられる点が最大のメリット。

 

しかし、柔らかく、熱に弱いため反り返りや、ヒビが入りやすいという難点があります。あまり強度や精度を問わない、大量生産の小物やアクセサリー、おもちゃなどに向いています。

 

一方、キャスト製法は、液体状のアクリル樹脂を上下のガラス板の間に流し込んで、長い時間をかけてあたため、その後ゆっくり冷やし固める作り方です。

 

作成に時間はかかるものの、しっかりとした硬さがあり、熱の影響を受けづらいという特徴があります。

 

キャスト製法で作られたアクリルは強度があるため、車のヘッドライトや水族館の水槽など、野外での使用に向いています。

 

彫刻をするのであれば、くっきりと文字やイラストが出る、キャストタイプのアクリルが向いています。

 

一方コスト重視で強度を問わないものの製作、かつ裁断だけの加工であれば押し出しタイプのアクリルでもよいでしょう。

 

次に、アクリルのレーザー加工を行う際は事故の予防に努めることも忘れずに。

 

レーザー光で熱して彫刻や裁断をするため、加工時の本体は非常に高温になります。また作業中は煙が出るため、換気は必須です。万が一の火災への対策として、できれば近くに消化器を用意しておくとよいでしょう。

 

アクリル片や粉の飛び散りもあるため、保護用メガネも欠かせないアイテムです。

 

最後に、レーザー加工ができない素材についても注意が必要です。

 

まず、レーザー光を反射してしまう素材(鏡や鏡面仕上げを施された金属など)はレーザー加工ができません。

 

レーザー光が鏡面に反射し、機械の内部を傷つけてしまうためです。

 

また加工時に有害ガスが発生する物質(塩化ビニール、フッ素、テフロンなど)も加工はできません。

 

有害物質の有無について、不明な場合は安全データシートや素材メーカーへ直接問い合わせを行い、確認しておくことをおすすめします。

アクリルにレーザー加工する時のコツ・テクニック

セルフでアクリルにレーザー加工を行う際に、知っておくべきコツやテクニックをご紹介します。 まず表面の曇り対策をしましょう。

 

加工をした際にレーザーの粉が飛び散って、アクリルの表面を曇らせてしまうことがあります。

 

曇り防止にはレーザーの出力を弱めるか、表面をマスキングすると効果的です。

 

アクリル板にはあらかじめ保護シートが貼ってありますが、これを取らずにそのまま加工するのをおすすめします。

 

太めのマスキングテープを全面に貼って養生するのもよいでしょう。

 

ただし裁断をする場合には、長期間貼ってあった保護シートの場合、アクリル板に跡がついてしまうこともあるため、新たに養生テープを貼り直した方がきれいに仕上がります。

 

カットする際は、アクリル板をカッティングテーブルから少し浮かせるようにするのも重要なポイントです。

 

アクリルをカッティングテーブルに直接置いたまま裁断してしまうと、素材を貫通したレーザー光が、テーブルにはねかえって素材の裏側に当たり、本体に傷をつけてしまいます。

 

素材をテーブルから3~5mmくらい浮かせて裁断することで、このレーザーのはねかえり現象を防ぐことが可能です。

 

浮かせる方法としては、カッティングテーブルに専用の小さなパーツをいくつか挟み込むように配置することで空間を作り、その上に素材を置く方法が一般的です。

 

最後に、裁断時に滑らかな美しい断面を実現するために、データ上であらかじめカットの始まりと終わりの位置を指定しておきましょう。

 

アクリルパーツの始点と終点には、どうしても筋ができてしまいがちで、クリアカラーのアクリルの場合にはそれが特に目立ちます。

 

シンプルな形の場合は、頂点に始点を配置すると跡が目立ちにくくなります。

 

一方、複雑な造形の場合は、内角に始点を定めると、カット跡をうまく隠すことができます。それぞれ入稿するデータの編集ソフトで始点と終点の位置を調整しておくようにしましょう。

まとめ

アクリルのレーザー加工は手軽に表現の幅を広げてくれる、大変便利なアイテムです。業者に依頼する場合も、自分で行う場合も、最終的に作りたいものの特徴をしっかり捉え、目的にもっとも適した方法での加工を選択しましょう。

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