布やレザーにレーザーを施す方法
レーザー彫刻機は木材やプラスチックなど様々な素材の表面に、任意の文字・イラスト・模様を彫り込むことができる機械です。
レーザー加工機でできることとしてはカット・彫刻・マーキングの3つが挙げられます。製品によっては皮革・ゴム・布・フルーツの果皮といった柔らかい素材にも彫刻を施すことが可能です。
家庭用やDIY向けの小型タイプも数多くあるので、オリジナルの模様や名前の彫刻、印鑑の製作などにもおすすめです。
レーザー彫刻機はレーザーの光をレンズで集めて強力なパワーにし、素材を削ることにより刻印する仕組みになっています。
虫眼鏡を使って太陽光を一点に集めると、紙を燃やすほどのエネルギーを作り出します。レーザー彫刻機も虫眼鏡も仕組みは同じです。
レーザーでの加工中はレーザー光線がかなりの熱エネルギーで材料に照射されます。その照射時間によって材料が変色してコントラストができたり、材料が気化したり焦げたりすることで彫刻を施しています。主に熱で焦げるもの、溶けるものであればレーザー彫刻機で加工可能です。
レーザーによる技術を活用すれば高精細なデザインを施すことができます。レーザー彫刻は摩擦に強く耐久性に優れているため、薄くなったり消えやすいこともなく、半永久的に残る彫刻加工となります。事実上グラフィックデータにできるものであれば、何でも彫刻やマーキングを施すことが可能です。大量生産だけでなく小ロットでの生産や特注品を製作する場合でも、費用効率が良く生産性の高い加工が行えます。
機械で彫刻加工を行う場合はクランプなどで材料を固定することも多々ありますが、その際に材料を傷つけてしまう可能性もあります。しかしレーザー彫刻なら材料を加工機のテーブルにセットするだけです。レーザーの光が出るヘッドの部分は材料に接触しない状態で加工を行うため、固定用の部品による材料の破損はありません。また材料を無駄なく加工できるので、加工後に余る端材も少なく抑えられます。その結果、作業時間と費用という両面を大幅に削減できるのです。
レーザー彫刻のやり方は印刷と同じくらい簡単です。まずPCやスマホを使って彫刻したいデザインを作成します。次にプリンターとしてレーザー彫刻機を選択し、デザインをレーザー加工用のデータとして出力します。そしてレーザー彫刻機に材料をセットして、焦点の位置決めが完了すればレーザー加工が開始されます。
レザー・布を加工できる彫刻機・加工できない彫刻機
基本的にほとんどの彫刻機でレザーや布を加工することが可能です。ただし材料によってはレーザー彫刻に適さないものもあります。生地の表面へすでに塗装や加工がされている場合はレーザー加工に適していない可能性もあるため、特殊な生地を使用する際はあらかじめ適性を確認するようにしてください。
また塩化ビニールのように塩素が含まれている合成繊維はレーザーで加工することができません。塩素を含んでいる素材にレーザーを照射すると有毒ガスが発生してしまうので、加工前にきちんと確認しておきましょう。
彫刻機によっては金属や陶器といった硬い素材を加工できるものもありますが、レザーや布は比較的柔らかい素材のため、生地の厚みに合わせてレーザーの出力を調整するようにしてください。出力が強すぎるとレーザーが生地を突き抜けて焦がしてしまうこともあります。加工前には同じ素材を使って事前にテスト加工を行ってみると良いでしょう。
レザー・布にレーザー彫刻をするときの注意点
布地には大きく分けて天然繊維と合成繊維の2種類があります。それぞれに特性があり、レーザー加工を行う際の注意点も変わってきます。
まず天然繊維をレーザーで裁断する場合です。焦げや変色を発生させないためにはレーザーの出力を弱めることで対応しましょう。またエアーコンプレッサーを強く当てることも効果的です。材料によってはあらかじめ霧吹きなどで濡らすことにより、黄ばみを抑えることもできます。
天然繊維をレーザーで彫刻する場合、レーザーの焦点距離を少し離すことで綺麗に加工できます。ただし出力が強すぎると生地にほつれなどが発生しますので注意してください。
合成繊維はレーザー加工との相性がとても良い素材です。レーザーの場合は熱で溶かしながら加工を行うためカットした断面が溶着処理された加工になり、布地のほつれが出なくなります。
合成繊維の場合もレーザーの焦点を少し離すことで綺麗に加工できることが多いです。ただし薄すぎる素材は溶けてしまって加工が難しいため、レーザー彫刻には向いていません。
レーザー彫刻機で生地を焦がしてしまう失敗を避けるためには、使用する生地がどの温度まで耐えられるのか把握する必要があります。デニムやキャンパス地、レザーなどの丈夫な素材は高出力で加工しても問題ありません。
しかしデリケートな素材の場合は100%近くの高速に設定して5~10%の低出力から始めてみることが重要です。最初は使わない生地にテスト加工を行い、もし耐えられるようなら最適な仕上がりを目指して出力を上げていきましょう。
衣服に直接彫刻を施す場合は、彫刻するドットの密度(DPI)を下げると上手くいきやすいです。DPIが高いほど、生地が多く削られます。DPIを低く設定して彫刻することで一番上の層が少しだけ蒸発するので、レーザーが生地を突き抜けて焦がしてしまうようなことはありません。ほとんどの生地は150~300DPIで綺麗に彫刻できます。
レーザー彫刻はレーザーの熱を利用するため、加工を行った部分は焦げた状態になります。特にレザーに加工した場合、焦げた部分を綺麗にする後処理をする際に他の部分にまで焦げの汚れが広がってしまうことも。
そんな時はマスキングテープ張ってからレーザー加工を行うと、汚れが皮革全体に付着しなくなるので便利です。レーザーでカットした際の断面は、汚れを綺麗に除去してからコバを磨き上げると美しい仕上がりになります。レーザーカットする場合は熱や発生する煙の影響で裏側も焦げてしまうので、生地の裏面にもマスキングテープを貼っておくと良いでしょう。マスキングテープが身代わりとなって焦げてくれるので、テープを剥がせば綺麗な生地のまま加工を行えます。
もちろん生地の表面を加工する際にもマスキングテープを使うことは有効です。表側にもマスキングすることで、焦げが広がらず綺麗な色のコントラストが表現できます。ただし焦げた雰囲気も味があるため、レーザー彫刻の醍醐味といえなくもありません。テスト加工をする際は焦げの雰囲気についても確認してみてください。
レーザー加工を行う際には光で熱して彫刻するので煙が出ます。必ず換気ができる部屋で使用するようにしましょう。万が一火災が発生する危険性もあるため、小型のものでもいいので消化器を近くに用意しておいてください。そして自分の目を守るためのレーザー用保護メガネを必ず掛けましょう。
またレーザー彫刻機は定期的にメンテナンスを行いましょう。あらゆるデザイン機器と同様、レーザー彫刻機でも綺麗な装置は質の高い動きをしてくれます。メンテナンスに必要な要件はユーザーマニュアルに記載されています。
性能が急速に低下したと感じた場合は、まずレンズとミラーをチェックしてクリーニングしてみてください。彫刻機のレンズとミラーは週に一度チェックして、必要に応じてクリーニングを行うことをおすすめします。レーザー彫刻機のレンズやミラーは通常クリアな金色をしており、ピカピカと光沢がある状態が基本となります。曇っていたり汚れや加工を行った際の削りくずが付着している場合は、レンスやミラーのクリーニングが必要なタイミングだといえるでしょう。
依頼するのとレーザー彫刻機を買うのではどちらがよいのか
レーザーを扱う加工機は切断や細かな彫刻もできる優れものです。しかし高価な機会なので、これまでは製造業や限られた現場でしか使用されていませんでした。そんなレーザー彫刻機ですが、現在では安価な家庭用としても手に入りやすくなっています。最近では卓上サイズのコンパクトなものも。ただしレーザー彫刻機を購入する際は、予定している加工素材のサイズより加工するエリアが大きな機種を選びましょう。
またレーザー彫刻機を置く場所が決まっているのなら、レーザー彫刻機そのものがきちんと収まるかどうかもポイントとなります。レーザー彫刻機で加工を行う際には本体だけでなく、集塵脱臭装置やコンプレッサーといった周辺機器を置くスペースも必要です。
現在レーザー彫刻機は世界中のメーカーが開発しており、Amazonなどのサイトを見ても海外製の商品が数多く販売されています。しかし海外製の商品はマニュアルに日本語がなかったり、不自然な日本語で説明されていたりするものもよくあります。また保証がなかったり、購入後のサポートがないという製品も多いです。
これらの点を鑑みると日本企業の製品が一番安心ではあるのですが、実際のところ家庭用の日本製レーザー彫刻機はほとんど販売されていません。業務用であれば日本製のものもありますが、安いモデルでも200万円前後と大変高価です。
海外製品のリスクやコスパなどを考慮すると、家庭用レーザー彫刻機を購入するのではなく業者に依頼するという方法も選択肢として入ってくるでしょう。また実際にどのくらいの頻度でレーザー彫刻機を使用するのかについても検討が必要です。
まとめ
レーザー彫刻機を利用すれば布やレザーにもオリジナルの加工を施すことが可能です。ただし加工の際にはいくつか注意点もあります。場合によっては業者に依頼することも検討しつつ、上手に活用してDIYの幅を広げましょう。