レーザー彫刻とは?仕組みと出来る事についてわかりやすく解説

レーザー彫刻とは?

レーザー彫刻は、太陽の表面の数倍のエネルギー密度を持つレーザービームによって、素材を切断したり、表面に模様や絵柄などを彫り込む技術です。

彫刻の深さはレーザーの強さや素材の種類によって調整できます。

レーザー彫刻の加工工程は、材質、板厚、加工形状、加工順序などの情報を事前にプログラムとして登録しておきます。

その後、素材を設定してスイッチを押すと、レーザー加工機が自動で作動し、加工が行われます。

レーザー彫刻は、刃を使うカッターによる彫刻と違って光によって加工する為、刃こぼれを気にする必要が無く、1mm以下の非常に精密な製造が可能なのが大きな特徴です。 レーザー彫刻の中でも加工に使用するデータの形式の違いから「ベクター彫刻」と「ラスター彫刻」の2種類に分類されます。

初心者の方の中にはこの2種類の違いを知らないまま製作準備を進めてしまって後からの修正が大変になってしまう方もいるようなので、あらかじめ押さえておく事をおすすめします。

ベクター彫刻とは?

ベクター彫刻は素材を切断加工する際に使われる加工法です。

画像を点で表現するラスター形式に対して、円やカーブ、色などを図形の集まりとして表現しているのがベクター形式です。

ベクター彫刻は始点から終点に向かって光を照射していく形式なので、動きに無駄が無く、ラスター彫刻よりも短時間で加工が出来ます。

ベクター彫刻で作成する際には画像はドロー系のソフトウェアのIllustrator等を使用し、.svg、.ai、.eps等の拡張子を使用して下さい。

 

ラスター彫刻とは?

ラスター彫刻とはラスター形式と呼ばれるグラフィックデータによる加工です。

ラスター形式とは画像を点を集めて表現されているデータの事を差し、主に素材に印や文字などを彫る時に用いられる方法です。

Adobe製品のペイント系ソフトウェアであるPhotoshopがラスター形式で、拡張子は.png、.jpg、.gif等を用いて保存する事が多いです。

レーザー光を指定された1つの点ごとに出力して形成していく為、微妙な濃淡など繊細な表現をするのに向いている反面、ベクター彫刻に比べて時間が掛かります。

 

レーザー彫刻の仕組み

仕組みに関しては非常に細かく専門的な部分ですが、レーザー彫刻を上手に活用する上で重要ポイントとなります。

 

レーザー彫刻 レーザー(光)の仕組み

小学生の頃に虫眼鏡で太陽光を集めると段々と一箇所が黒く焼け焦げていき、最終的に紙に穴を開ける実験をした事がある人は多いと思います。

レーザー彫刻も光を集めて穴を開け、形成するという意味では上記の実験と近い原理で成り立っています。

光は基本的には電磁波で出来ていて、太陽光(自然光)や電球など私たちが明りを灯す為に使う光は複数の波が集まって出来ていて光はあらゆる方向に拡散します。

一方、一つの波長のみで構成されているのがレーザー光です。波長が単一な光は強い指向性を持ちます。 指向性とは直進性が強く広がりを持たない特性を持ちます。

その指向性の高いレーザー光をレンズに集める事でエネルギー密度の高い光源を得られて、その高エネルギー密度の光源を使い、マーキングや切断といったレーザー彫刻ができるようになります。

 

レーザー彫刻 機械の仕組み

レーザー彫刻で使われる加工機は「レーザ発信器系」「加工光学系」「加工物質系」3つのパートから構成されていて、加工目的に合わせて各パートの調整が必要です。

 

①レーザ発信器系の仕組み

レーザー光を発振させて加工する部分の事をレーザー発信器系と呼びます。加工する素材やその厚みや加工精度によって光の強さによってレーザー光の波長や出力を選択します

 

②加工光学系の仕組み

レーザ発信器から作られたレーザー光を集めてテーブルに照射する為の装置です。

レーザー発信器からレーザー光を送る光路と伝送されたレーザー光を集めた上で対象物に照射する集光系から構成されています。

また、その光を伝送させる仕組みはミラーに反射させて伝送させる方法と光ファイバーを利用する2種類の方法があります。

 

③加工物質系の仕組み

対象物を固定する為のテーブルと加工物の事を指します。 レーザー彫刻を行う際に、加工物の光の透過率や吸収率、反射率等が仕上がりに大きな影響を与えます。

照射位置を移動しながら加工を行う場合は集光系やテーブルを駆動するシステムが必要となり、加工の精密を高めたい場合は、テーブル送りのスピードの調整も必要です。

 

レーザー彫刻の種類

レーザー彫刻に使われるレーザには「CO2レーザー」、「ファイバーレーザー」、「YAGレーザー」の3つの種類があります。

それぞれ得手不得手や適した加工法、使用できる素材など大きな違いがあるので購入前に各三種類の違いを把握して用途にあったレーザー加工機を選択する事が重要です。

 

CO2レーザー

3つのレーザー加工機の中で最もポピュラーなのがCO2レーザーで、古くから存在する歴史あるレーザーの一つです。

その名前の通り二酸化炭素をレーザーガスとして媒体にして放電してミラー、レンズを経由して対象を加工する仕組みです。

導入費用が安く、金属、木材、ゴム、ガラスなど幅広い素材が加工可能ですが、銅やアルミなど反射率の高い素材の加工には不向きです。

CO2レーザーの中にも非常に高出力な製品もあるので、場合によってはステンレスや鉄といった素材の切断も出来ますが、1台1000万円以上と非常に高価です。

また、CO2レーザーは素材によっては火災事故が起きる事があるので、素材の選定や機械の手入れや作業中に目を離さないようにするなどの注意が特に必要です。

 

ファイバーレーザー

ここ数年で登場した新しいタイプの加工機です。

CO2レーザーが不得手とする銅やアルミといった難溶接材や反射性が強い金属加工が出来ます。

また、レーザーガスが不要でエネルギー効率が良いので運用コストを抑えられて発電機が軽便で場所を取らない、等のメリットから他のレーザーに変わって人気が出つつあります。

しかし、現状ではまだまだ導入費用がCO2レーザーと比べて掛かってしまいます。

 

YAGレーザー

YAGレーザーとはイットリウム(Yttrium)アルミニウム(Alminium) ガーネット(Garnet)を用いた固体レーザーで、「ヤグレーザー」と呼ばれています。

YAGレーザーはレーザー彫刻の他に医療用のレーザーとして眼科や歯科での治療や脱毛器としても使われる機会が多いです。

高品質なレーザー光により素材に対する熱影響を抑える事が出来るので、0.3mm〜0.5mmの薄い素材に対しても歪みが少なく表面が滑らかで美しい仕上がりが実現出来ます。

金属や樹脂、セラミックなどの加工に適していて、特に樹脂材の発色性が良く、綺麗な印字を施す事が出来ます。

 

レーザー彫刻の用途

レーザー光線によって非常に強い熱エネルギーが素材に照射されます。 照射時間によって素材を変色させ、焦がして切断していく事で加工が完成していきます。

レーザー彫刻は耐久性が高いので、半永久的残る加工として様々な場面で活躍しています。 そのレーザー彫刻の用途は大まかに「レーザーマーキング(刻印)」「レーザーカット(穴あけ・切断)」の2種類に分類ことが出来ます。

 

レーザーマーキングとは?

レーザーマーキングとは、対象物にレーザーを当てて表面を削る、溶かす、酸化させるなどの加工を施す方法で、主に図形や記号、文字など印を付ける為に使われています。

レーザーによるマーキングは非常に精度が高く、印字が消える心配が無く、更に素材よって表面を焦がす、メッキなどを酸化させる、はがす、変色させる等の最適な方法を選べます。

レーザーマーキングの活用法等は多岐に渡り、鉄やアルミ、ステンレスなどの金属製品からプラスチック、紙、段ボールやゴムなど、様々な素材に適用出来ます。

具体的には、ノベルティー、記念品、雑貨、ギフト製品のロゴ入れ・名入れやスマホ関連、バイク、医療関連、工業部品などへの金属製品のシリアル番号や製造年月日、個体番号マーキング等でレーザーマーキングが用いられることが多いです。

レーザーマーキングはほぼ全ての材料で加工する事ができますが、レーザーの波長によって仕上がりに差が出ます。

 

レーザーカットとは?

レーザーカットとは、レーザー光当ててる事で熱による分離を行い、希望の形状に切断したり穴を開けたりする加工工程です。

レーザー光は非常に強力なエネルギーを持っているので、熱を使って材料を溶かしながら処理されます。

レーザーカットは、レーザーマーキングと同様に皮革や木材、紙や布といった比較的強度が弱い素材の加工や、板金の加工やアクリル板の切断などに活用されています。

レーザーカットの加工例としては、木材のコースターの作成、革製のブレスレット・しおり・財布、金属製のアクセサリー等が挙げられます。

レーザー彫刻の種類の部分でご紹介したようにCO2レーザーを使用して金属のレーザカットを行う際には出力レベルの高いレーザー光を必要とします。

レーザー彫刻のメリット

レーザー彫刻には他の加工法にはないメリットが多数あります。

仕上がりが美しい

レーザー彫刻と違いプレス機械による彫刻の場合、バリ、カエリと呼ばれる金属の出っ張りが出来てしまいます。 バリやカエリは手の怪我に繋がり、パーツ加工時は正確な組み合わせが出来なくなってしまうので、研磨等の後処理を必要としていました。 レーザー彫刻ではバリやカエリは発生しにくいので綺麗に切断面が仕上がります。 また、ひび割れや歪みのリスクが低いので、高い品質を保つ事が出来ます。 

自由度が大きい

レーザー彫刻は幅広い素材に対して多様な加工を加える事が出来つつ自由度の高さも魅力です。 取り扱える素材は、紙、木材、皮布、金属、セラミック、ダイヤモンドと薄く柔らかい素材から硬く変形しづらい素材まで多種多様です。 加工方法も切削や穴あけ、素材に文字などを入れ込むマーキングとプログラム次第で希望に応じた様々な形状への加工が可能です。

小ロットかつ多品種に対応

この「小ロット・多品種に対応出来る」部分に魅力を感じレーザー彫刻を選択する人も多いようです。 レーザー彫刻は、データさえあれば加工する事が出来るので最小で1つからでも加工が可能で、データの変更1つで類似デザインの作成が出来て、作業の切り替えも容易に対応出来ます。 その為、オリジナルの商品を作りたい、名前を入れて一点物にしたいなどの需要に応える事が出来ます。

繊細で緻密な加工に対応

レーザー彫刻では、比較的難易度が高いとされる精密で繊細なデザインであっても容易に加工することが可能です。 レーザー光は約0.1mmと極細です。その為、他の加工機器や手作業では表現しきれない微細な穴開けや複雑な曲線の切断などにも正確に対応出来ます。 細かい絵柄や画数の多い漢字の彫刻やバーコードやシリアル番号のマーキングといった正確さが要求される場面では特にレーザー彫刻の強みが発揮されます。

メンテナンスが比較的容易

他の加工法と比較してメンテナンスに時間を割かれない部分もレーザー彫刻のメリットです。 レーザーによる加工は他の工具と接触が無いので、摩耗する事が無く消耗度が低く、加工した際に材料の粉塵が発生しない為、それらを除去する手間もありません。 最低限のレンズ、ミラー、その他エアーアシストと呼ばれるレーザー照射部にエアを送り込む装置などの清掃は必要ですが、手軽なメンテナンスで済むので、生産効率の向上に繋がります。

 

レーザー彫刻の注意点

多くの利点があるレーザー彫刻ですが、注意点もあります。

速度が遅い

レーザー切断の大きな注意点は、処理速度が遅いことです。 非接触レーザー加工は、レーザー光を時間通りに照射することによって行われれて、素材を溶かしながら加工する為、結果的に加工に時間がかかります。

仮に速度を重視するとしたらプレス加工の方が適していると言えます。 レーザー加工機の切削速度を上げることも可能ですが、 速度が速い程にバリやスラグが多く発生するリスクが高まります。

バリやドロスの発生により後処理が必要となり、結果的に時間コストが掛かってしまいます。

特に金属加工においてはレーザー加工以外の有効な方法も多様にあるので、場合によっては別の方法を選択した方がコストパフォーマンスが良い場面もあります。

 

加工出来無い素材がある

万能に近いレーザー彫刻機ですが、厚版の素材は加工しづらく、アルミや銅など反射率が高い素材は加工が出来ないといった注意点があります。

レーザー加工には適切な焦点距離というレーザーの光が集中している箇所が有り、その焦点距離の範囲でないとエネルギー密度が低下して素材へ光線が届かなくなります。

その為、厚手の素材では加工が難しい場合があります。また、反射率の高い素材はレーザーの光を弾いて素材への電熱が出来ず加工が出来ない事が多いです。

ランニングコストが高価になる可能がある

多様な材料と加工方法を備えたレーザー彫刻ですが、その分ランニングコストはパフォーマンスに比例して増加してしまいます。 加工機の維持費に加えて、電気やガスの費用などの追加費用があります。

更にフォーカスレンズとミラーは定期的に交換する必要があります。 レーザー加工機は精密機械なので日頃から慎重な取り扱いと定期的なメンテナンスが必要となります。

初期費用を抑えたい方は、新品より安く購入出来て中古のレーザー加工機を選択するのも1つの手段です。

 

まとめ

ここまでレーザー彫刻の詳しい仕組みや加工方法や活用法、メリットや注意点などについて解説して参りましたが、いかがだったでしょうか?

レーザー彫刻と一言で言っても、業務用の大きな機械での彫刻もあれば、個人向けの安価で小型タイプを使用する場合も有り、加工方法もマーキング、切断と非常に広義の加工法を差していますね。

特にレーザー彫刻は用途は幅広く、日常使いのグッズ作りや記念品やロット番号の刻印など、レーザー彫刻の細かい表現が出来て文字などが消えにくい長所を生かした使い方が数多くあります。

初めてレーザー彫刻について調べてみた方は、専門用語が多くて化学的な側面が強く、難しい部分もあったかと思われますが、恐らく事前知識はあればある程後々実際に使用する場面になって役立つ事が多くなるはずです。

レーザー彫刻を試してみるとしたら、まずはどんな素材で作品を作りたいか初期費用、ランニングコストや機械を場所などをざっくりと検討してみると、用途に合った適切な加工機の選択に繋がると思います。

その為に是非この記事を役立てていただければと思います。 レーザー彫刻に使用するレーザー彫刻機は精密機械なので、難解な部分や注意しなければいけない部分もありますが、色々な素材を自由に加工する事が出来て微細な表現も可能なので、非常に大きな可能性を秘めている事をお伝えできれば幸甚です。

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